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48「鐘の音」

 先日、あるご門徒様が亡くなりました。

 その方はうちのお寺の行事鐘を長年打ってくださった方でした。

 行事鐘とはお寺での法要の際に、法要が「今から始まりますよ」と、周りに告げるために打つ鐘の事です。うちのお寺ではここ30年程、すべてのご法要においてその方に行事鐘を打っていただいておりました。

 5,6年前だったでしょうか、だいぶ高齢になられたので体力的に厳しいいかと思い、私はその方に小さくて軽い撞木(鐘を打つ木槌)を用意して渡しました。ところがその方は、

「もう何年も前になりますが、あるおばあちゃん達が、私が打つ鐘の音を遠くの離れた堤防に座って毎朝聞いていると、声をかけてもらったことがありました。今はその方々はおられないけど誰かがどこかで聞いてくれているかもしれないから、私は体力が続く限り大きな撞木を使って少しでも大きな音を響かせたいです」

と、おっしゃられました。結局最後までその重くて大きな撞木でその方は鐘を打ってくださいました。

 その方が亡くなられた後、東京から来られたお孫さんがしばらくこちらへおられ、毎朝のお勤めに来てくださいました。

「帰られる前に一度行事鐘を打ってみませんか」

と声をかけ、私が隣で教えながら鐘を打ってもらいました。

「じいちゃんはこんな重たい物(撞木)で毎朝鐘を打っていたのですね」

と、言いながら拙くも思いのこもった鐘の音が優しく響き渡りました。

 

南さつま市 廣泉寺 大八木宗司